スペイン世界遺産

太陽と情熱の国、スペイン。私たちがこの国を聞いて真っ先に思い出すものは、フラメンコや闘牛、あるいはサッカーなどでしょう。しかし、この国は極めて個性的な歴史を持ち、多くの建築物や自然景観が歴史的に価値があるものと評価され、世界遺産に登録されていることをご存知な方はそう多くないかもしれません。この国は、世界遺産登録件数が、イタリア、中国に次いで第3位という、世界遺産の国なのです。(2013年現在)

ここはヨーロッパ大陸の最南端に位置する国の一つで、それ故にほかの大陸からも攻め込まれやすく、8世紀から15世紀にかけてはイスラム勢力の支配下にありました。しかし、その後は大航海時代に入り、植民地支配により、イベリア半島以外の地域に次々と入植しました。現在も中南米の殆どの国でスペイン語が公用語になっていることからもわかるように、かつてこの国は、世界最強国家の一つだったのです。現在はヨーロッパにある国家の一つに過ぎないという印象ですが、世界遺産の多さからもわかるように、この国の歴史や文化はほかの国々と比べて非常に豊かで、観光客に人気のスポットが多くあります。

この国の文化の大きな特色の一つは、ヨーロッパでありながらどことなくエキゾチックなところです。先にも触れました通り、この国は長きにわたり、イスラム勢力の支配下にありました。しかし、そのことが皮肉にも彼らの歴史・文化を豊かにしたのです。 現地人は、イスラム教の素晴らしい建築様式や幾何学的に統一された装飾を自分たちの文化に取り入れ、独自の様式を確立してきました。それが、「ムデハル様式」や「イザベリーノ様式」と呼ばれるものです。特に、ムデハル様式はスペイン各地で取り入れられました。代表的な建築物は、世界遺産に登録されている「アラゴンのムデハル様式の建築物」や「グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン」などです。

ここはカトリックの国なので、純粋なカトリック建築のものも古代から多く残されており、何もこの国独自の様式だけが存在するのではありません。ここには、世界三大巡礼地であるサンティアゴ・デ・コンポステーラがあります。そして、その旧市街と、フランスからの巡礼路は、共に世界遺産に登録されていて、この地域では、いかにもヨーロッパらしい、ゴシック建築の数々を見ることができます。スペインは、異文化も自国の文化も取り入れ、それぞれの街が比較できないような個性を持っているのです。

スペインの特色をもう一つ挙げると、多くの民族が融合してできた国で、地域ごとに強いアイデンティティがあることです。公用語はスペイン語ですが、バスク地方にはバスク語があり、バレンシアではバレンシア人がバレンシア語を話します。彼らは統一された国の中で、今尚、自分が属する民族に対して非常に誇りを持っているのです。そして、そのような誇りがまた多くの世界遺産を生み出してきました。

カタルーニャ州バルセロナにある「アントニ・ガウディの作品群」は、その典型的な例です。建築家アントニ・ガウディは、自分がカタルーニャ人であることを常に強く意識し、カタルーニャ独自の文化形成をすることに燃えていました。そんな思いと彼の個性が強く結び付き、素晴らしい建物群を生み出したのです。バルセロナにはそのほかに、ドメネク・イ・モンタネールが手掛けた「カタルーニャ音楽堂とサン・パウ病院」という世界遺産もあり、バルセロナに代表される都市では、一民族が放つ強い個性を見ることができます。

スペインの世界遺産は、文化遺産が39件、自然遺産が3件、複合遺産が2件の合計44件です。(2013年現在)私たちが気軽に訪れることができるのは、観光客向けサービスの充実した文化遺産登録物件のほうだと思います。しかし、この国は、本土の内外に広大で素晴らしい自然遺産があり、それらもできれば訪れてみたいものです。一番身近な場所は、世界複合遺産に指定され、リゾート地として開発されているイビザ島の「イビサ、生物多様性と文化」だと思います。

スペインでは、地中海沿岸の町々で美味しい地中海料理を食べることができ、豊かなブドウ農園で熟成された良質なワインを堪能することができます。時には陽気な現地の人に囲まれ、そんなスペインの食に下鼓を打ちながら、世界遺産の数々も巡ってみてはいかがでしょうか?陽気なこの国の風土に浮かれるだけでなく、その合間に一つでも多くの世界遺産を訪れることができれば、もっともっと楽しくて素晴らしい時間になるはずです。